『狂った果実』の言葉と体

Sが貸してくれたDVD、石原裕次郎主演『狂った果実』を観る。
映像も音楽も役者の表情も体も、もう、すべてが、どの細部を取ってもじつにイカしている。なかでも印象的だったのはセリフ。(脚本は石原慎太郎。音楽は武満徹、制作は水の江滝子!)

あの時代の湘南のドラ息子ドラ娘たちが、友だち同士では機関銃みたいに早口のべらんめえ口調でしゃべり、自宅へもどると、兼高かおるみたいなしゃべり方(兼高かおるってご存知ですこと?)の母親が出てきたりして、その2つの異世界がなんとも興味深かった。
冒頭、岡田真澄扮する日米混血の大学生の鎌倉の別荘(ちなみにこの青年の自宅は高輪)の場面で紅一点、ハルコという良家のお嬢さんが男どもに、「お腹空いたでしょ? メシにしようか?」と声をかけるのだ。うぉ、「メシ」ですってよ。わたしはその瞬間、耳を疑い、少なからず驚いた。まるで10年くらい前の仲間由紀恵がお嬢さま役を演じながら、こう、口にする感じを想像していただきたい。驚くでしょ。
チャラいモテ男の岡田真澄が女を突き放しながら――だったかな?――「ご縁と命があったら、また逢いましょうね〜」だなんて言ったりもするのだ。
ス・テ・キ!

役者の体さばきというか、立ち居振る舞いも、なんだか見知らぬ国の映画を観るように新鮮に見えた。津川雅彦の立ち方、歩き方、あれはナンダ?!? カッコつけないにもほどがある(?)。あれって無意識なのか? それとも演技? 堅物で奥手な弟を、遊び人でええかっこしィな兄(裕次郎)と対照的に見せるための演技なのだろうか。いま、カメラの前であんなふうに立ったり歩いたりできる役者はまずいないのではないだろうか。というか、戦前の丁稚奉公を見たことはないが、藤山寛美の芝居に出てきそうというか、戦前の丁稚のような体さばきなのである。

来世では江波杏子になる予定だが、前世がもし変えられるのなら、日劇ダンシングチームに入って体を鍛え、北原三枝のようになりたい。

って何言ってんだか。