未知のスパイス

17日(土)。渋谷・Li-Po落語ライブ第5回(柳家一琴師)。一席目は、一琴さんのレパートリーになかったのにリクエストさせていただいた「魂の入替」。これがめちゃくちゃ面白く、盛大な拍手のあとの休憩時間の、あのまろやかな賑わいが忘れがたい。
この根多、ひと言で言うと『トータルリコール』のような話で(ってウソウソ!)、ある晩、鳶の親方と先生(学者センセイのことなのかな?)の魂がひょんなことから入れ替わってしまうのだが、ふわふわと空を飛ぶ魂を表現するのにある重要な所作があって、一琴さんがまじめな顔で真剣にこういう所作をやるのが、ふだんのイメージからはちょっと想像できなくて、そのギャップゆえになんともチャーミングだった。
ちなみにその魂同士の会話は、「センセイの魂」「親方の魂」と呼び合う。わかりにくいから、まんま、説明しちゃうんですねセリフで。手堅い、精緻なテクニシャンの一琴さんが、愛敬なんかみじんも添えずに、この手の身も蓋もないナンセンスぶりをまじめに演じるから可笑しいのだ。見るからにナンセンスな笑いが好きそうな落語家がいかにも軽やかに演ろうとしたら、きっとつまらないのだろう。(いや、軽やかじゃないからいいというのは、体格のことではありませんです……一琴さん、ゴメンナサイ!)
また、短い噺なのに登場人物が7人も出てきて(魂含む)、そのさりげない演じ分けの妙も、一琴さんにお願いしてよかったとその力量の頼もしさに感じ入った一席でした。
二席目は「首提灯」。緊迫感がやや勝った、一席目と好対照の高座でした。
落語家自身も気づいたことのない意外なスパイスを発見できる高座はほんとに楽しい。

22日(木)はフラメンコのカンテ、石塚隆充をひさびさに聴きに銀座へ。四丁目の交差点で渡辺“阿Q”寧久氏にバッタリ。「どこ行くんだよぅ」と阿Q氏。もし共学の高校へ行ってたら、町で男子に会うとこんな言い方されたんだろうな。

25日(日)午後は小澤敏也師匠のパンデイロ教室・サテライトクラス。夜は祐天寺の一之輔独演会優先で、国分寺でのJINGLE GYMのライブは行けず。落語会の帰途、近くの公園で少しだけパンデイロ自主練。