皮膚は薄っぺらい大脳

『皮膚は考える』(傳田光洋、岩波書店)を読了。

皮膚の表皮というのは発生学的にいうと外胚葉起源で、中枢神経系や視覚や聴覚、嗅覚と同じだそう。片や表皮のすぐ下の真皮は、中胚葉に由来する別モノ。つまりきわめて薄っぺらい(厚い部分でも0.2ミリ)、それでいて脳ミソに近いものが人体の表面を覆っているわけである。それゆえ表皮はセンサーであり、イオン代謝の加減などを自ら判断する器官でもあるのだが、かてて加えて、なんと自分でホルモンを分泌したりもする。
内臓や内分泌系の影響でお肌の調子が良くなったり悪くなったりするのは当たり前だが、お肌はお肌で自前でホルモンを分泌していて、それが心身に影響を及ぼすという逆のベクトルがあるのでした。驚きました。

でもって健康なバリア機能をもつ皮膚は、体内に比べてマイナスの電気を帯びているのだそう。皮膚はいわば“電池”でもあるのでした。
はんはーん、なるほど。さすればキスした瞬間や手のふれあう瞬間のアレはやっぱり電気だったのだ。それもそのはず、道理でピリッとくるのは接触した瞬間だけである。つまり接触をつづけるとジョンからメリーへ、あるいはメリーからジョンへ電気が流れ、ジョンとメリーの身体は巨大な電池と相成るのだなぁ、などと勝手に解釈、そして妄想。そして、ジョンとメリーのあいだの電位差こそ、「肌が合う」という語で言い表わされる「相性」のことなのではないか。
さらには、ある種の化学繊維や金属アクセサリーを身につけると体調がよくなったり悪くなったりする(肩がこる、手先足先が冷えるetc.)ことなど、読みながら次々と気づかされることしきり。
ところで、乾布まさつがどうして体によいのか本書は言及していなかったが、この著者ならどういうデータをもとにどう説明するか、ちょっと興味のあるところです。

ちなみに私は首に10円ハゲならぬ10円アトピーがあるのだが、アトピー性皮膚炎にかかった皮膚は、末梢神経が必要以上に表皮に侵入してしまっているらしい。つまり健康な表皮の敏感さは、そこそこに留まるのである。さじ加減と言いますか、いい塩梅と言いますか、皮膚は鈍感でも敏感すぎてもあかんようです。
この本、文章もとても感じがよかったでした。