けだるい半七

ささいな不思議な出来事というものはわりとあるもので、喜多八師が数々こなす地域密着型小規模独演会のひとつ、「百合ヶ丘寄席」へ向かう途中、小田急線の車中で、ドアの真ん前で念入りにストレッチをする御仁あり。
見ればかなりイケメンのジェントルマンで、おろ! 喜多八師匠ではないですか。

宮戸川」、うわーん、面白かった〜。

たいていの場合、主人公の半七は初々しくて童貞っぽいうぶなキャラとして造型されると思うんですね。そしてそういう半七は、まるで大江健三郎の文章のようにわたしをイライラさせるのですが、喜多八演じる半七は、あまりにもモテるがゆえに女を鬱陶しがる、ただの面倒くさがりやのけだるい若造(笑)。
しかも、そういうキャラはふつう、とくに映画や小説では傲岸でええかっこしぃな若者になりがちなんですが、喜多八さんの半七はいたって控えめで、むしろその怪しいまでの謙虚さの裏に色気がほの匂うんですな。非常にオリジナルな人物造型でした。
ってか、もしかすると深読みしすぎというか、ファンゆえの妄想ですかね、わはは。

霊岸島の伯父さんちへ向かう途中、半七が、足の速いお花に追い越されるってのも笑えた。これは喜多八さんのオリジナルなんでしょうか、それとも小三冶師のバージョンとかでもそうなんでしょうか。
ばあさんのエグいボケ・キャラにも爆笑。
ですが終盤は、若いふたりの「なれそめ」の夜の始まりになんだかやたらドキドキしちまいました。

むかーし聴いた雲助さんの「宮戸川」は、雷と、暗い日本家屋――日本家屋であたりまえか!――がやたら怖かった。
ちょいと怖いとエロさも募る、とでも申しましょうか。

『ダメ蟹』宣伝チラシを少し配らせていただきました。多謝。