クラシカル三昧週間

11日(木)はイギリス在住のバイオリニスト、相曽賢一朗さんのリサイタルへ(東京文化会館小ホール)。
端正な中にも驚きと楽しさのちりばめられたリサイタル。失礼な言い方かもしれないが、優秀なセダンが、走り出したら水陸両用車と判明し、最後は仕込みの翼が出てきて空を飛んだのを目撃したような感じ――相曽さんはちょっとOO7のようなバイオリニストである。
私のような永遠の素人クラシックリスナーには、MCというか曲の合間の解説がとてもありがたい。講義めいた説明ではなく、もっぱら作品への関心をかきたてる解説で、演奏とは別に、それもひとつの技と言える気がした。

13日(土)昼は、はじめて紀尾井シンフォニエッタ東京を聴きに紀尾井ホールへ。お目当ては、いまをときめくとされるチェリストのひとり、マリオ・ブルネロが指揮する武満徹の映画音楽で、ベッタベタの「他人の顔」に大満足。涙チョチョぎれそうになる。後半の、やはりブルネロ指揮のベートーベンの『田園』は、妙に映画音楽風に聞こえる不思議さにときどき引き込まれたが、総じて凡庸で退屈に思えてしまいました。ちなみにこのひと、チェロかついで富士山に登って山頂で演奏したとかで話題になった御仁です。富士山の山頂でやるなら、そらあんた、アイロンかけやろ!

ところで、片山杜秀の音楽評を束ねた本って刊行される予定はないのだろうか。このひとの比喩ったら、そりゃもう、面白いの面白くないの! (って言うまでもなくめちゃくちゃ面白いちゅうことでっせ!)よく知らない演奏家や作曲家の本質をガッツリつかんだ気にさせてくれる批評なのだ。まだ世に出ていない、だがしかしいつか必ず出るはずの、待ち遠しい本のひとつである。