うちにキャプテンが……

六年前、いまの住まいに引っ越して以来、一度も空けていない段ボールが3個あり、この忙しいのに魔が差して、そのうちのひとつを開けてみたところ、床下の小人たちが巣をつくっていて、台所の流しの下からいつの間にか消えてなくなっていたカルヴァドスの瓶が見つかり、しかもそれが空になっているではないか。
「床下でもないのに……分をわきまえなくてすみません」と小人のキャプテン。
「キャプテンなんですか?」と訊いたところ、「川淵さんより、うんと立場、弱いんでさぁ」と頭をかいていた。斜め四十五度、うつむき加減で頭をかくキャプテンは下町の職人のようだ。

残りふたつの段ボールを開けるのに、勇気がいるようないらないような、居ても立ってもいられないような、それでいてめんどくさいような、スコットランド北部の夏の空模様のように複雑な心境です。

(「うちにキャプテンが……」て、小人よりそっちかい!)